いちご畑は火事

なんだって雪の降る夜はロマンティックにみえるもんだと、誰かが教えてくれたわけじゃないのにそう思うのは何故かしら。正月の時期をずらして実家に帰った。寝転んでても朝昼晩飯はでるし、買いに行かなくとも酒はある。あたたかいこたつに猫のようやうずくまる我が家の犬っころ。心配することはなにもない、育った家で自分の帰れる場所があると言うこと。だが決してそこへ帰らなければならいと言う訳ではない。

弟は執拗に地元へ帰りたがり、兄は執拗にどこかへ行きたがり同じ血を引いたとて似ているのは下らないことで競い合えるところだけ。実家に帰る度に違う女を連れてくるのが弟、一度も連れて来たことがないのが兄。ちゃんと働いているのが弟でちゃんとは働いてないのが兄。競馬にお金をかけるのが弟でお酒をひっかけるのが得意なのが兄。お年玉をあげるのは弟、妹に貧乏呼ばわりされるのが兄。

林檎のようなに真っ赤にした頬にくりくりの瞳を光らせていた彼は火の中に飛び入り水をかけるたくましい男になっていた。弟は弟なのに何故か大人になってしまった彼に感じる違和感は素敵なことなのだと思う。女との付き合い方、金の使い方、僕らや大人と変わらないこともするわけだ。そう考えたとすると僕らはいつから大人になるかと言うと結局他人の目で大人になるのかしもれない、また大人になる事ができないのかもしれない。

 

火事現場とは悲惨なものだ。だが弟はこう教えてくれた「炎に包まれた畑の匂いは甘かった」と。

 

当事者と第三者の感想とはいつも対極のようなところにある。彼方から放たれた言葉は彗星になって僕らの暗い夜空に白い尾を引きその美しさを示してくれる。残酷なことがの方が美しい時もあるのかもしれない。弟は素直だ。